ただの私の脳内

音楽と映画と本と旅と語学

一人じゃないのよ、分かるでしょ?

 

 

東京で過ごす年末年始は二度目だった。

 

地元を出てから今回を入れて10回の年越しのうち、1回はアメリカ留学中、1回は昨年のロンドン旅行(そう、1年前はロンドンに居た。信じられる?)東京で年を越したのは大学時代にバイト先のカウントダウンイベントを外せなかったときのみで、何だかんだ言いつつ10回のうち6回は実家に帰っていた。31日の夜遅くに着いて2日の朝には出るパターンがお決まりとはいえ、わたしだって親に寂しい思いをさせたくないという感情は持ち合わせているのだ。実はね。

 

でも今年は控えることにした。親も「高齢者」だし。なんとわたしが、一人時間のプロフェッショナルのようなこのわたしが、完全に一人で年越しをするのは初めてだったようでそのことに気づいたときはなかなかの衝撃を受けた。崩壊家庭育ちあるあるだろうが、わたしにとって年末年始は日頃に増して孤独を感じるイベントである。1週間後の誕生日まで含めてまあまあ泣きたくなる。そんな時期を、一人で、どう過ごそうか。

 

そんなところに舞い込んで来たのが普段からお世話になっているヨガの先生が開催する年末年始スペシャルプログラムだった。6日間、朝7時から。

 

7時…

 

わたしは朝に弱い。特に会社員になってからは不眠も酷く、よく働いてたなと思うくらい夜に寝て朝に起きることが困難な時期が続いた。医療を含めそれはもう数々の改善法を試してきたうちの一つがこの先生のヨガのクラスだった。ヨガ歴7年目にして出会えたことが昨年の嬉しかったことランキングの上位に入るくらい、少人数でコミュニケーションをとりながら丁寧に進んでいくこのクラスはわたしに合っていて、だから普段の午前8時半からのレッスンにもどうにか行けていた。心身のサイクルを整えていく過程において大きな役割を果たしてくれたし、不眠も完治とはいかないけど脳みそフル回転のまま夜明けを迎えてしまうことは殆どなくなった。だから参加しようと思った。わたしは!夜に寝て!朝に起きるんだ!(7時か…)

 

年末年始のわたしの一日は大体こんな感じ(時間は適当)

 

7:00 ヨガレッスン

8:30 カフェで韓国語の勉強

11:00 本屋を徘徊したのちたいやきを食べながら帰宅

12:00 足湯(ヨガで裸足になって冷えるので)&家事

14:00 おひるね

16:00 読書(寝るまで)

 

本当に毎日これ。そう、毎日、できました!早朝ヨガ、行けました!7時!

 

せめてこの休暇の間だけは情報を遮断して思考を止めたかったので上記の他のことは基本的に排除した。スマホは何度かチェックする以外は電源を切っていたし、ヨガ&カフェには持って行かなかった。本も小難しいノンフィクションではなく予め選んでおいた小説だけを読んだ。テレビは元から持ってない。そして何と言っても、映画を観なかった。

 

毎日すっぴん(眉毛は描いた)でヨガ着にパーカー姿のまま徒歩圏内でゆるゆる過ごして感じたのは、意外と自分は孤独ではないということだった。うわ、すごいわたしらしくないこと言ってるな?

でも、早朝ヨガの1日目、いつものごとく起きられずにグズグズしたのち開始数分前に文字どおりスタジオへ滑り込んだわたしに先生やお姉さんたちが「あ、来た!」と笑いかけてくれた瞬間、そう思ってしまった。

毎日ギリギリだったのに、先生は「あんなに起きられないかもって心配してたのに一度も休まなかったなんてほんとすごいよ!」と褒めちぎってくれた。わたしは褒められることが苦手で「コイツ見返りとして何を求めてるんだ?」とか「それは本心なのか?」とか「この程度で褒めてくれるなんてわたしのことなめてんのか?」とか思ってしまうのだけど、なんでだろう、多分もう信頼してしまっているから、嬉しかった。今後も大丈夫な気がしてきた。

先生だけでなく、毎日ただそこに行くだけで同じ顔ぶれが揃っていることにすごく安心した。それが義務や責任で繋がれた関係ではなく、先生が呼ぶ名前の他に何も知らない人たちが毎日そこに居ることが心地よかった。いつのまにか、居場所になってた。

 

その感覚はヨガスタジオの外にもあった。毎朝、カプチーノとクロワッサンを買って韓国語を勉強していたカフェ。近所で美味しいエスプレッソが飲めて、かつ、ゆっくり勉強ができるのはここだけなので普段からよくお邪魔している。だけど、毎朝同じ時間に行くなんてのは初めてだ。それも年末年始。そして住宅街。そう、ここにも、毎日同じ人が居る。同じ人が、同じ席で、同じ飲み物を置いて、同じことをしている。普段からいつ行っても居るおじいちゃんは年末年始の朝にもやっぱり居て、彼は特別だけど、他の顔ぶれにも段々と愛着が湧いてくる。とっくに冷めきっているであろうカフェモカをちびちび飲みながら無心で世界史Bと向き合っていたくまさんペンケースの高3らしき女の子、めっちゃ応援してる。

 

あ、寂しい。明日からこれが日常でなくなるのが寂しい。

 

今回こうして何もしない毎日を過ごしていて気づいたのは、自分が一人旅のときと非常に近い感覚になっていたこと。わたしは国内でも海外でも観光地をめぐる旅行はしない。たまにそういう日もあるけど基本的には起きたらのんびり朝ごはん食べて街を歩き回ってカフェや海辺や公園で本を読みながら人間観察をする。それだけ。昨日とか明日とか予定とか欲望とか肩書とか関係なくて、ただ今ここに流れている時間をぼけーっと眺める。時々どこかの誰かと交わす言葉を大切に反芻しながら、静かに静かにそこに居る。その感覚を得られるのが一人旅だと思っていて、暇さえあればどこかへ行ってしまう理由の一つだった。それを東京で体感できた。びっくりした。でも考えてみたら、これまでずっと連休があったら迷わず旅行していたので東京でこの感じになれるはずもなかった。上京した18才のときから東京には刺激が溢れすぎていて、闘うための場所で、ここから離れない限り良くも悪くも立ち止まれないと思っていた。でも違うのかも。場所を変えなくてもコントロールできるのかも。少なくとも今のわたしは。

 

なんか、本当に大丈夫な気がしてきた。多分、もう、眠れる。

 


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インターネットに接続しないと勉強できないのがいやになってついに韓国語の辞書を買いました。とても楽しい。