ただの私の脳内

音楽と映画と本と旅と語学

One Night Only

 

最初の一音からエンドロールが終わって明かりが点くまで泣き続けた。大切な作品を初めて映画館で観た。

 

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中学二年のとき、映画館から帰ってきた母がサントラを爆音で流して「あんたも観た方がええで」と言った。母とふたり泥沼のような毎日を送り学校にもちゃんと行けてなかった私は拒否した。

でもそのサントラは信じられないくらいかっこよかった。英語の歌詞を理解することもできないのに涙が出た。両親に教え込まれた「ヘタクソな音楽を聴くな」の意味がようやく腑に落ちた気がして母がいないときに何度も何度も聴いた。

高校生になってからようやくDVDで本編を観た。ずっと聴いていた曲たちが繋がって、映画館で観なかったことを後悔した。

母への反抗なんかで見逃すべき作品ではなかったと自分のアホさに笑った。いつかまたチャンスがあれば絶対に観に行くと決めた。映画は何十回も観た。サントラは何百回も聴いた。ビヨンセのライブでは劇中歌を生で聴いた。ブロードウェイ版の来日公演にも行った。物語も台詞もリズムもビートも隅から隅まですっかり染み込んでしまっても映画館で観る機会はなかった。

それでもこの作品は私にあらゆる影響を与え続けていて、好んで聴く音楽も大学で選ぶ授業もアメリカ留学への思いも、ショービジネスへの視線も、社会への関心も、どれだけのものをこの一本の映画から吸収したか。だって、中学二年で出会ってしまったから。

 

今日、泣いて泣いて泣きまくったその涙の理由が自分でも分からない。十年も経ってしまった。高校はサボらずに行った。東京の大学に受かった。ダンスを続けた。クラブで働いた。アメリカに留学した。旅をした。会社員になった。母とはまだ仲良くなれてない。

この十年の色んなことが映画の音と絡みに絡んで自分でもよく分からない感情になってしまった。当時は学び始めたばかりで全く聞き取れなかった英語も今は自分の力で理解できる。

 

映画館で観てる。極音上映の重低音が心臓に響く。これは夢か…?

 

ずっとずっとずっと後悔してた。母とは今でも映画と音楽の話しかまともにできない。そんな彼女の薦めを拒否なんてするべきではなかったのにガキだから分からなかった。もしあのとき観に行ってたら。感想を語り合えたら。ちょっとはマシな関係になっていたかもしれない。少なくとも何往復か楽しく会話ができたかもしれない。

 

25才になってから観たってあのときの何かを変えられるわけではないけど、時間をかけて実現できることもあるんだなって思った。チャンスを逃したと悔いたところで戻ることはできないけど終わりでもない。

 

たったこれだけのことに十年もかかった。それでも叶った。まだあきらめたくない。あきらめなくていい。そう強く思った夜。

Patience, Patience, It's gonna take some time~♪

 

年末が近づいてる。何をどうしたところで帰省への憂鬱は消えやしないけど会ったら「ドリームガールズ、映画館で観た」と真っ先に言おう。そしたら何て返してくれる?一晩だけでも言い争わずにこの映画の素晴らしさについて語り合える?

 

そうなったらええな。

No matter what we are, we are a family~♪